学生広報部レポート/69歳が新しい挑戦!コロナ禍で変わった授業形態

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69歳が新しい挑戦!コロナ禍で変わった授業形態

コロナ禍で大学の授業形態も対面授業からZoomでのリアルタイムオンライン授業、現在は対面とオンデマンド授業の併用と変化しています。コロナ禍の大学生活で戸惑いを感じているのは私たち学生だけではありません。授業をしてくださる先生方もコロナ禍による授業形態の変化に戸惑いを感じながらも、学生により良い授業を提供できるように変化に対応してきました。そんな先生方の中から日本文化論とビジネス読解の授業を担当されている髙木隆政先生を学生広報部3年の小林がビジネス創造学部副学部長の木幡先生と取材してきました。

今回お話を聞いた先生

髙木 隆政(たかぎ たかまさ)

かえつ有明中・高等学校で国語の教員を経て、嘉悦大学で日本文化論、ビジネス読解を担当する非常勤講師となる。しかし、就任と同時にコロナ禍となり、オンラインやオンデマンド授業となる。2020年度はZoom※1でのオンライン授業、2021年度からはオンデマンド授業※2を経験し、69歳となった今も新しいことに挑戦し続けている。

※1 パソコンやスマートフォンを使用するオンライン会議ツール

※2 先生があらかじめ、ビデオを作成、保存し、学生がその動画を観る講義

インタビュー

高校と大学の授業の違い

小林:高校と大学の授業の違いは何ですか?

髙木:一番は中学・高等学校の場合は、文科省が指定している教科書や問題集を使用して受験に向けて勉強していきます。なので勉強する目的は受験に合格するための授業が中心となります。人数も30人前後と決まっていて、質問事項も受験に向けてのものが多い傾向です。一方、大学の授業の場合は、教員自身が学生に伝えたいことを自ら考え、授業として伝えていきます。教科書がなく、パワーポイントを作成して授業を行う場合もあります。僕としては自分の知っていることを学生に伝えていくのを生き生きとやっています。

木幡:本来、高木先生は年齢的に定年退職のはずでしたが、大学の教員をやって頂くようになりました。高木先生は大学に来るまで、パワーポイントを使用したことがなかったけれど、大学の教員になったのをきっかけにパワーポイントを使い始めたんですよ。高木先生が高等学校教員から大学教員に変わったタイミングにちょうどコロナの流行が重なってしまいました。コロナさえなければ、そこまで苦労することはなかったですけどね。

髙木:でも逆に考えれば、コロナがあったからこそZoomが使えるようになったし、ビデオ作成も出来るようになりました。僕にとっては70歳近くになってこんなことが出来る自分に驚いています。学生に対してはいい加減な事は出来ないので、大学の先生方に教わりながら出来るようになってきました。

木幡:あの頃はみんな変化に対応するために必死でやっていましたね。助け合って生きてきたって感じです。

Zoom授業

小林:Zoomの授業で苦労したことは何ですか?

髙木:まず「Zoomって何?」からのスタートでした。Wordを使うことくらいしかできなかったから、基礎から使い方を学ばないといけないことが大変なことでした。正直、大学の教員を辞めようかと思うくらいでしたが、大学の先生方にサポートしていただき出来るようになりました。

小林:Zoomの良いところは何ですか?

髙木:オンデマンド授業に比べると、より対面に近いところですね。ただカメラオフでZoomを繋いでいる場合、顔が見えないので心配になります。

オンデマンド授業

小林:オンデマンド授業になって準備で大変なことは何ですか?

髙木:対面でもオンデマンドでも授業準備の内容は同じなので大変さに違いはないです。ただ、オンデマンド授業の場合、ビデオ作成に時間がかかります。また、ビデオを作成した後の出力作業に多くの時間を割きます。なので授業準備で一番大変なことはビデオ作成ですね。 当初はパソコンでの作業に慣れていなかったので、先生方にサポートしてもらいながら覚えていきました。今はだいぶ慣れたので良いのですが、初めてビデオを作るのが大変でした(笑)。

小林:オンデマンド授業を行うのに苦労していることは何ですか?

髙木:一番は授業が一方通行になってしまい学生と対話がないことです。まだZoomで授業していたころは学生の顔や質問事項をリアルタイムで見ることが出来ましたが、オンデマンド授業になるとリアルタイムで学生と関わりあいがないので対面と比べると正直ちょっと物足りません(苦笑)。

小林:では逆に、オンデマンド授業の良いところは何ですか?

髙木:通勤時間が無くなったことです。良いなと思うのは自分の家から授業が出来ること。その分、運動不足ですが(笑)。

小林:そうなんですね。授業を受ける側の学生としては繰り返し動画を観て学習出来るところだと思います。

木幡:学生に聞くと小林さんのようなコメントが多く出てきていて、これは一長一短あるなっていうのと、分からないところを繰り返し学ぼうとする学生がいることが僕は嬉しくて。

髙木:なるほど! 今、それを聞いてびっくりしました。

木幡:真面目な学生は、課題をやる時に授業でやったことをもう一度見直す。これを学修効果と考えれば、あながちオンデマンドも悪くないと思います。しかし、それだけ教員を悩ませるんですけどね

髙木:僕も毎回学ナビに課題を出して、提出された課題を出席代わりにしています。授業に熱心な学生は課題に対しても手を抜かないので驚かされます。ただ、中には授業開始と同時に課題を進める学生も若干いるのが少し残念ですね。でも、ビデオを観て沢山の内容を書いて提出してくれる学生もたくさんいるので、それは嬉しいなって思っていて、繰り返し動画を観て学修しているということを聞いて、それはいい事だなと思いました。

小林:繰り返してみることが出来ると聞き逃しが減るので理解しやすいなと感じています。

小林:通勤以外でオンデマンド授業になって良かったと思う事は何ですか?

髙木:オンデマンド授業用のビデオを作れるようになった。それは嬉しい。今69歳で、始めたのが67歳だから、出来るようになった自分自身に感心しています。新しいことを覚えることは大変なことだけど、出来たってことはこの年でも喜びになっている。

木幡:一方で、ここまでやらなくても良かったわけですよ。高木先生は一番手の込んだやり方をマスターしたんですよね。最初Zoomで授業して、対面と併用になってオンデマンドに切り替わったので、オンデマンドもZoomもやったんですよね。この急激な変化の中で教員を辞める選択肢があった中、高木先生がやったっていうのは本当にすごいなって思います。教員歴が長い人ほど授業のやり方の変化についていけないものですが、高木先生が柔軟に受け入れて進化したのはすごいと思いました。

髙木:最初はZoomの画面共有も出来なかったので、授業中に学生が教えてくれました。さらにオンデマンド授業が出来るようになったこともすごく嬉しかった。それを先生方や職員の人たちや学生たちも支えてくれたことは1つの財産を得たってことで嬉しいよね。 

対面授業

小林:オンデマンド授業を体験して改めて感じた対面授業の良いところは何ですか?

髙木:一番は対話です。それから学生と一緒になって授業を作っていけるところ。一緒になって90分間の授業をしていると質問がでてくる。すると僕は「そうだよ。良くそこに気づいたね」って、それに対してさらにしゃべっちゃうんだよね。それで授業が進まないことがあるんだけど、でもそういうのが対面授業の良さだと思います。それからね、対面の時は人数制限があるから現在よりも少ない履修者数だったんです。多くても40人くらいでした。なので日本文化論の授業では知っている宮司さんがいる神社に学生全員を連れて、みんなで参拝に行ったりもしました。建物の中に入って参拝することはめったにない事なんだけど、拝殿って言って本殿に入らせてもらって、神主さんに何かやってもらうということを学生全員で体験しました。そのようなことが対面授業では出来ました。そうすると学生は「こういうことっていつやるんですか?」って神主さんに聞いて、神主さんが「生まれたばかりの初宮参りの時にやったんですよ」とか答えていました。神社は一例だけど、そういうのは大きな経験だと思っています。現在ではコロナの影響でそういうことが出来ないから、個人で神社とかお寺とかをお参りしてレポート書いてねってことはやっています。日本文化論の授業で行っているのは、現在に古くから伝わる文化を伝えることです。だから、みんなが当たり前のようにやっていることが日本の風習で、「昔からこんなことをやっていたんだ」や「神社やお寺は何のためにあったんだろう」と言うことを学生たちで勉強します。それが日本の文化の基礎だからそれから現代に江戸時代のどういう文化が伝わっているのかなっていうのを学生みんなで調べてみようっていう感じの授業を日本文化論では行っています。なので、調べるだけではなく実際に体験ができるのは対面の良さかなと思います。

木幡:実際に行って神主さんからお話を聞くとか説明をしてもらうっていうのはなかなかできない経験なので、コロナで出来なかったっていうのはなかなか辛かったですよね。やっぱりみんなで直接行って話を聞いて、見て、音を聞いて、場の雰囲気から学ぶってすごく大事なことですよね。

髙木:そうですね。神社の中の裏の方も見せてくれることもあります。太鼓がおいてある場所とか、大きい太鼓はどういう時に使うのか、御神輿はどうやって作るのかなどの説明をして下さいます。ですから学生にとっては大きい経験です。

小林:実際に体験してみることは対面でしかできないことなので、とても魅力を感じます。

小林:オンデマンド授業を体験して改めて感じた対面授業の良くないところは何ですか?

髙木:対面授業は本当にいいですからね。強いて挙げるとすれば通勤時間ですかね。電車だけでも1時間半かかるのは少し負担ですが、乗っている時にはずっと本を読めるますし大学へ行ったら学生たちにも会えるし先生方ともお話しできます。僕はコミュニケーションがすごく大事なことだと思っているので、対面授業で悪いことはないと思います。

小林:私は履修者が多すぎても授業として成立しないのではないかと考えていますが、どうお考えですか?

髙木:コロナ禍でもカエツホールであれば対面授業をしても良いって言われたんですよ。でも150人ほどの学生を相手にマイクで授業をやっても楽しそうじゃないでしょ。カエツホールで講義をしてる先生方もいますが、僕はあまりそういう授業をしたいと思わない。それだと一方通行の授業と同じだと思うので、通勤時間のないビデオの方がまだ良いかなと思いました。

木幡:対面の履修者数の規模はどうあるべきかというのは大きな投げかけですよね。これからそこは考えていかないといけないのかもしれない。

※カエツホール 座席数250席の多目的ホール 履修者の多い講義を始め、外部講師を招いての講座などが行われる

オンデマンド授業と対面授業を比較してみて

小林:オンデマンド授業に変わり、学生の声はどうでしたか?

髙木:メールで「会って話をしたい」っていう学生が多いです。「大学いつ来ますか?」みたいな感じで「会って話がしたい」「会ってもっと詳しく聞きたい」「もっと先生のことが知りたい」というメールが来ます。「会いたい」って声が一番大きいかな。

小林:私もやっぱり対面授業の方が理解しやすいので、対面授業の方が良いと考えてます。

木幡:分かった時に一緒に喜べるっていうのがすごく大事で、先生って学生が「分かった」時の顔を見るのがすごく嬉しいんですよ。「やったね。分かったね」ってなるとこっち(教員)も嬉しくなります。オンデマンドはそこが見えにくいっていうのがあって。「分かった」を一緒に楽しめることこそが大学に来た意味、勉強している意味だし、先生はそうなることが楽しくて仕方がないです。 髙木:まったくその通りで、対面授業しているときに「先生、こういうことなんだよね」って言われると「おお、そうだよ」みたいな感じで拍手しちゃいたくなります。一緒になって授業を作っていけるっていうのが対面授業の良さだと思う。ただ授業をするだけだったら全然面白くないから、一緒に授業を作っていく。だから毎年違う授業になるんだよね。僕は考えるきっかけを与えているだけであって、学生に一生懸命考えてほしいと思っています。

小林:今後対面とオンデマンドを選択して授業が出来るとしたらどちらが良いですか?

髙木:もちろん対面ですよ~。声がきちんと出るうちは対面でやりたいんです。69歳だからおじいさんになってきてだんだん声が出なくなったら授業をやらないつもりでいるから、授業は声が出るうちじゃないとやりたくないと思っているよね。

終わりに

今回は50分にわたり、先生のオンデマンド授業やオンライン授業を作る大変さや、コロナ禍で授業形態が変化したから気がつくことの出来た対面授業のありがたさをお聞きしてきました。私自身もコロナ禍に大学生活がスタートし、思うように過ごせず苦労してきましたが、苦労したのは学生だけではなく、先生方も同じだと気づくことが出来ました。現在では対面授業も少しずつ再開してきているので、対面授業のありがたさを感じながら、今後の大学生活を送りたいと思いました。

文責:学生広報部 経営経済学部3年 小林奈菜

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